初級と中級と上級の違い

スキルレベルを示すのに、よく初級・中級・上級といった表現が使われます。しかし、「どこまでが初級でどこからが上級なのか」、明確な定義が無いままに使われるのをよく目にします。そのままでは、自分が中級だと思っても実は初級だったり、あるいは、その逆だったりするということが起こります。これでは、せっかくのレベル表示が何の役にも立ちません。初級・中級・上級といったレベル表示は、ちゃんと定義してから使わないと、効力を発揮しないのです。

そんな心配をして夜も眠れなくなる事態を避けるため、私は id:passingloop 内でのみ通用する「オレオレ」初級・中級・上級を定義することにしました。本エントリの内容は世間一般に対して通用するものではないことに注意してください。本エントリでは、レベル定義についての理解を深めるため、最初に代表的なレベル定義の方法について述べ、その後に id:passingloop の初級・中級・上級定義を解説します。

代表的なレベル定義の方法

初級・中級・上級といったレベル定義の代表的方法として、(1) スキルを数値化して数値の範囲として初級・中級・上級を示す方法、(2) 初級・中級・上級の各級ごとに難易度の異なる試験を用意して、どこまで試験に合格したかによって示す方法、の 2 つがあります。

(1) 数値によるレベル区分: TOEIC を例に

まず、(1) のレベルを数値に置き換えられる場合について考えています。数値の例として、TOEIC スコアを用いてみましょう。

表 1 TOEIC の例
初級 10-495
中級 500-795
上級 800-990

レベル区分がスコアの範囲として明確に定義されているので、間違える心配はありません。たとえば、TOEIC スコアが 730 の A さんは、表 1 の基準に従うと「中級」になります。

ただし、基準が変わればレベル区分も変わります。たとえば、表 2 の基準に従う組織がある場合 *1

表 2 TOEIC の例
初級 850 未満
中級 950 未満
上級 950 以上

先の例に上げた A さんは初級扱いです。このように、スコアとして能力が測定されている場合でも、そのスコアを評価する基準がない場合、能力を評価することができません。

(2) 試験の難易度によるレベル区分: Ruby 技術者試験を例に

つぎに、(2) の試験の難易度によるレベル区分について考えてみます。例として、http://www.ruby-assn.org/certification/programmer/index.html.ja というベンダー資格試験を挙げてみます。試験と初級・中級・上級との対応を示した表を用意します。

表 3 対応する試験
初級 シルバー
中級 ゴールド*2
上級 プラチナ*3

表 3 に従うと、たとえば、B さんがシルバー試験に合格したとすれば、B さんは自分が初級だと知ることができます。試験の難易度によるレベル区分でも、数値によるレベル区分のときと同じように、試験種別とレベル区分との対応が明確に定義されていれば、初級・中級・上級のレベルを知ることができます。

id:passingloop の初級・中級・上級の考え方

これまでに数値によるレベル区分と試験の難易度によるレベル区分の 2 つのレベル定義方法を説明してきました。しかし、これら 2 つの方法は「試験」を利用するものであり、「試験を受けられる人」についてのみ適用できる方法です。したがって、ブログエントリや書籍のような「試験を受けられないもの」については別の方法を用意する必要があります。そこで、id:passingloop は試験不要のレベル区分方法を提案します。

表 4 id:passingloop のレベル区分
初級 知っている
中級 できる
上級 教えられる

はい、これだけです。

この方法は、先の 2 つの方法と比較すると精度に劣りますが、人が感覚としてもっている「レベル感」の個人差は意外と小さいと経験的に理解しています。たとえば、表 4 の基準を "Rails アプリケーション開発" にあてはめると、

表 5 Rails アプリケーション開発のレベル区分
初級 Rails アプリケーション開発について知っている
中級 Rails アプリケーションを開発できる
上級 Rails アプリケーション開発を教えられる

となります。各級における具体的人物像のバラツキは案外小さいのではないでしょうか。

しかも、表 5 の区分は、人材だけでなく、書籍・記事や教育コースなどにも適用可能です。たとえば、「初級向け書籍」というと、「Rails アプリケーション開発を知っている人を対象に、Rails アプリケーションを開発できるようになるための本」を示すことになります。

表 5 の方法の利点をもう一つ挙げるとすれば、「対象者だけでなく、対象者向けコンテンツを作成する人も、何となくレベルをイメージできること」です。たとえば、先に示した Ruby 技術者試験の例で挙げると、受験者は自分のレベルを把握できますが、「シルバー」向けの教科書を作成するのは、試験の開発者でない限り難しいです。しかし、表 5 で示されると、「何とはなく」ですがレベルをイメージすることができます。

おわりに

本エントリでは、id:passingloop のレベル区分を「知っている」「できる」「教えられる」の三段階で示しました。これで、次エントリ以降で安心して「初級」「中級」「上級」のレベル表示ができるようになりました。

ところで、古代ギリシャの哲学者アリストテレスはこんなことを言っていたそうです↓

Those that know, do. Those that understand, teach.

http://www.great-quotes.com/quote/51301

彼が示す Know < Do < Teach が、このエントリの考え方の柱です。しかし、この名言が記録されている文献も無いようですし、なにより、彼が生きていた時代には英語なんてありませんでしたから、本当はこんなこと言っていないんでしょう。と id:passingloop が思っていることを補足しておきます。

*1:冗談じゃなく本当にあるからこわいわぁ

*2:対応する試験が未実施であることをつっこんではいけない

*3:対応する試験が未実施であることをつっこんではいけない