Project Tin Can とは

Project Tin Can は,SCORM 2004 の次の e-Learning を考える Rustici Software の研究プロジェクトです.Project Tin Can は ADL 公認のプロジェクトなので,実質的に SCORM 2004 の後継といってもいいでしょう.本エントリでは,この Project Tin Can の概要を解説します.

Project Tin Can が描く次の e-Learning の形

Project Tin Can では,SCORM 2004 の枠組みにとわわれずに,新しい e-Learning の形態を提案しています.具体的には,従来の WBT にみられる LMS を中心としたコンテンツ配信ではなく,LRS (Learning Record Store) と Web リソース,SNS, ゲーム,シミュレーションなど様々な学習活動との結びつきによる学習経験の提供です.

従来型の LMS ではコンテンツは LMS から配信されましたが,LRS はもはやコンテンツを管理しなくなりました.代わりに,外部の様々な学習活動から学習データ(ログ)を受けとり保管します.

Tin Can API

外部の学習活動が LRS に学習データを送るときに利用するのが Tin Can API です.現在は REST ベースの API 仕様が提案されてるので,それをもとに説明します.Tin Can API が送るメッセージは Activity-Verb-Object の三つ組だそうです.実際には Activity-Verb-Object-with-Result-in-Context 形式もあるので五つ組なのですが,Activity-Verb-Object の三つが強調されます.

このメッセージを JSON として HTTP(S) で LRS に送信します.たとえば,

{
    "actor" : {
      "mbox" : "passingloop@example.com",
      "name" : "passingloop"
    }
    "verb" : "completed",
    "object" : {
       "id" : "http://example.com/course/ruby-1.9.3",
       "definition" : "Introduction to Ruby 1.9.3"
    }
}

となります.

おわりに

LRS と Tin Can API により,コンテンツは LMS で配信する必要がなくなります.これで,LMS に教材をインポートする必要も,また,教材がインポートできる形式である必要もなくなります.すなわち,SNS や ゲーム,シミュレーションといった従来の LMS 型の e-Learning では提供できない学習経験を提供できるようになることを意味します.

Project Tin Can は研究プロジェクトで,今後 SCORM 2004 の次を担う e-Learning 標準に成長するかどうかは現時点では分かりません.しかし,このプロジェクトが成功し,LRS と Tin Can API が広く普及すれば,e-Learning の可能性はさらに広がることでしょう.