内田和成「仮説思考」
某所で紹介されていたのが面白そうだったので,図書館で借りてきて読んでみました.全 236 ページで,30 分ほどで読めます.副題に「BCG 流問題発見・解決の発想法」とあるので読むのに身構えてしまいそうです.しかしなんのことはない,「何らかの問題解決を仕事にしている人は,仮説を立ててから仕事を始めたほうがいいよ」というお話でした.主張の大部分は具体例つきで説明されているので,気楽に読める本だと思います.図書館で見つけたら手に取ってみてください.
以下,この本を 5 分で紹介するためのメモを書いてみました.
仮説思考とは
- 仮説思考 ... 情報が少ない段階から全体像と結論を考えるスタイル
- 仮説 ... 情報が少ない段階で考えた全体像と結論.でもウソかもしれない.ウソでもいい
著者のいう「仮説思考」とは間違いでもいいから全体像と結論を最初に考える仕事の仕方です.ここで全体というのは「議論としての全体を考える」と「対象範囲としての全体を考える」の 2 つを含みます.「議論としての全体を考える」というのは「間違い(仮説)でもいいから,問題解決のストーリーを結論まで書いてみる」ということです.「対象範囲としての全体を考える」というのは,「自分よりもひとつ上のレベルの課題をきちんと理解する」ということです.たとえば,自担当が在庫問題だったとして,いきなり会社全体の問題を考えるのは難しいでしょうから,まずは,在庫管理に関係する生産・調達・営業などを視野に入れるということです (p.230).
良い仮説とは
著者が主張する良い仮説とは,問題解決につながる仮説のことです (p.141).仮説の正しさは重要ではありません.仮説が問題解決につながるためには,具体的である必要があります.具体的というのは何らかのアクションにつながるということです.
仮説の検証法
- 実験
- 思考実験=議論
- 分析
同僚と議論するだけでも検証になります.
仮説を立てる方法
- ツール ... BCG などのコンサルティング会社で使われている雛形
- 直感
一般人も仮説立案にツールを使えればいいのですが,コンサルタントの商売道具なので使わせてもらえません.そこで,一般人は直感に頼ることになります.直感力を向上させるには,経験を積み,知識を増やすだけでなく,「勘の良さ」を磨くことが重要です.
直感力 = 経験 × 知識 × 勘の良さ
勘の良さを磨く方法として,著者は日常的に,
- 疑問を投げかける「だから何?」「なぜ」
- 対立仮説を立てる
- 未来予測を立てる
をすることを勧めています (p.194-).
とはいえ,勧められても↑を一人だけで継続するのは難しいでしょう.継続的に「勘の良さ」を磨くトレーニングができる環境があるコンサルティング会社がうらやましくなります.
理解度チェック問題
本には書かれていませんが、「仮説思考」を理解しているかどうかを確認するための問題を 2 問用意しました。良い解答を思いついたらコメント欄に記入してみてください。
問1 節約上手主婦
主婦の A さんは家計の赤字に悩んでいます。そこで、「日々の買い物を安く済ませられれば節約になり赤字を解消できる」と仮説を立てて、日々、スーパーの特売に走ることにしました。
A さんは仮説思考といえるでしょうか。それは、なぜでしょうか。
問2 事件の構図
検察の捜査手法が問題だとされることがありました。検察が事件を捜査するときには、まず、事件の全体像、すなわち、「事件の構図」を描き、それに基づき証拠を集め、犯罪を立証していきます。この手法は、まさに「仮説思考」そのもので、問題解決に最適の方法です。それにもかかわらず、この手法が問題だと批判されてしまうのは、なぜでしょうか。
おまけ = 仮説思考に限らないけど
この本は,「仮説思考」が主題なのですが,それ以外にもコンサルタントのちょっとしたノウハウがいくつか説明されています.その中に,「相手に何かを説明するときには結論を先に示す方法と最後に結論を示す方法の 2 つの方法がある.どちらを選ぶかは相手の思考パターンに合わせる.」というのがあります.私は前者を好み私の相方は後者を好みます.ですので,私が何も考えずに話をすると喧嘩になります.これを避けるため,忘れた頃にこういう本を読んで,思考パターンの違いを思い出して喧嘩にならないようにしています.
- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/03/31
- メディア: 単行本
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